セルフメディケーション税制ーよくある勘違い
2017年からスタートした新税制のセルフメディケーション税制。
5年間しか実行されない予定なのに、あまり国民に浸透している気がしません。
なぜでしょうか・・?
「薬局で買い物したら領収書を捨てないでとっておきましょう」
セルフメディケーション税制について説明する際によく用いられているフレーズです。
従来の医療費控除は、
「一年分の医療費の領収書を捨てないでとっておきましょう」
というものでした。
似ていると思いませんか?
この似通ったイメージが税理士を含めて全体的に勘違いを起こさせて利用促進に歯止めをかけています。
その勘違いとは
「セルフメディケーション税制対象薬が従来の医療費控除の枠の中の薬である」
というものです。
医療費控除の薬代はこんなイメージです。
こんな感じで薬代自体は医療費の中でも少ないものです。
そこにさらに「セルフメディケーション対象薬」に絞られると聞くと、
「範囲の広い医療費控除の方が良いに決まってるからセルフメディケーション税制なんて考えるのはやめよう」
となってしまいます。
しかし、条文をよくよく読むとセルフメディケーション税制では、医薬品の購入は「治療のため」とは限られていません。
【根拠条文】
(医療費控除)
第七三条 居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払つた場合において、その年中に支払つた当該医療費の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。)の合計額がその居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の五に相当する金額(当該金額が十万円を超える場合には、十万円)を超えるときは、その超える部分の金額(当該金額が二百万円を超える場合には、二百万円)を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。
2 前項に規定する医療費とは、医師又は歯科医師による診療又は治療、治療又は療養に必要な医薬品の購入その他医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要であると認められるものとして政令で定めるものをいう。
3 第一項の規定による控除は、医療費控除という。
【租税特別措置法】
(特定一般用医薬品等購入費を支払つた場合の医療費控除の特例)
第四十一条の十七の二 医療保険各法等(高齢者の医療の確保に関する法律第七条第一項に規定する医療保険各法及び高齢者の医療の確保に関する法律をいう。次項において同じ。)の規定により療養の給付として支給される薬剤との代替性が特に高い一般用医薬品等(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第四条第五項第三号に規定する要指導医薬品及び同項第四号に規定する一般用医薬品をいう。次項において同じ。)の使用を推進する観点から、居住者が平成二十九年一月一日から平成三十三年十二月三十一日までの間に自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る特定一般用医薬品等購入費を支払つた場合において当該居住者がその年中に健康の保持増進及び疾病の予防への取組として政令で定める取組を行つているときにおけるその年分の所得税法第七十三条第三項に規定する医療費控除については、その者の選択により、同条第一項中「各年」とあるのは「平成二十九年から平成三十三年までの各年」と、「医療費を」とあるのは「租税特別措置法第四十一条の十七の二第一項(特定一般用医薬品等購入費を支払つた場合の医療費控除の特例)に規定する特定一般用医薬品等購入費を」と、「医療費の」とあるのは「特定一般用医薬品等購入費の」と、「その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の五に相当する金額(当該金額が十万円を超える場合には、十万円)」とあるのは「一万二千円」と、「二百万円」とあるのは「八万八千円」として、同項の規定を適用することができる。この場合において、同条第三項中「第一項」とあるのは、「第一項(租税特別措置法第四十一条の十七の二第一項の規定により適用する場合を含む。)」とする。
2 前項に規定する特定一般用医薬品等購入費とは、次に掲げる医薬品(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第一項に規定する医薬品をいう。以下この項において同じ。)である一般用医薬品等のうち、医療保険各法等の規定により療養の給付として支給される薬剤との代替性が特に高いものとして政令で定めるものの購入の対価をいう。
一 その製造販売の承認の申請(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第十四条第三項の規定による同条第一項の製造販売についての承認の申請又は同法第十九条の二第五項において準用する同法第十四条第三項の規定による同法第十九条の二第一項の製造販売をさせることについての承認の申請をいう。次号において同じ。)に際して既に同法第十四条又は第十九条の二の承認を与えられている医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が明らかに異なる医薬品
二 その製造販売の承認の申請に際して前号に掲げる医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が同一性を有すると認められる医薬品
3 第一項の規定により所得税法第七十三条の規定を適用する場合に必要な技術的読替えその他同項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
分かりやすいように、租税特別措置法の読み替え指示の通りに条文を書いてみます。
(医療費控除)
第七三条 居住者が、平成二十九年から平成三十三年までの各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る特定一般用医薬品等購入費を支払つた場合において、その年中に支払つた当該特定一般用医薬品等購入費の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。)の合計額が1万2千円を超えるときは、その超える部分の金額(当該金額が8万8千円を超える場合には、8万8千円)を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。
となります。
つまり、条文の中に「医療費」という単語が出てこなくなります。治療のためだけに限られないわけです。
実際、セルフメディケーション税制対象薬の中には、
アリナミンEXゴールドや
キューピーコーワiプラス
といった滋養強壮目的の薬も含まれています。
これらの薬を滋養強壮で買う場合、従来の医療費控除では対象外でした。
しかし、セルフメディケーション税制による医療費控除では、「治療目的」以外の購入費も控除対象になります。
そうです!
全く違う枠なのです。
要するに、必要な薬を年末に買いだめしてOKなのです。従来の医療費控除の感覚で病気になるのを受動的に待つ税制ではないのです。
この点で、「領収書をとっておいて集計して、医療費控除との比較をしましょう」と勧めているサイトが多いですが、
その言葉が当てはまるのは「年間医療費が10万円を超すことが確実なよく病院にお世話になっている人」だけです。
割と健康な家庭が、そのスタンスだと節税の機会を逃すことになります。
年末までに必要なセルフメディケーション税制対象薬があればまとめ買いをしましょう。
(※「買いだめ薬リスト」作成の役に立つのがこのサイトです。対象薬の絞り込み検索ができます。)